2012.08.20 今回は、ちょっと真面目なオーストラリアの文化政策のおはなし at Spiral

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先日、表参道のスパイラルが主催しているVOiCE World Channelという国別にアート活動を紹介するレクチャーシリーズへ行ってきました。

今回の主役はオーストラリア。

出演者は、メルボルンで活躍するキュレ−ターのZara Stanhopeさん、アーティストのPrue Cromeさん、パースで活躍するアーティストのPIP&POPさんです。

ザラさんとプルーさんは横浜の象の鼻テラスで9月2まで個展を開催中。

PIP&POPさんは8月3日までスパイラルガーデンで開催されていた「うたかた、たゆたう」展に参加されていました。

左から、PIP&POPさん、プルーさん、ザラさん、

 

 

レクチャーのテーマは「オーストラリアの文化政策に関するスタディ」。レクチャーの前半にザラさんが国とメルボルンの文化政策をざっと説明した内容に対して、私が持った印象は、「政策自体は特に目新しい要素はないけれど、とにかく手厚い!」ということ。国、州、市町村それぞれが文化政策と助成金制度を持っているので、文化活動を複層でサポートできているし、活動場所もアーティストが比較的自由に選べるものが多いのです。

PIP&POPさん曰く「作品を作るのと同じくらいの時間、助成金の申請書を書いています。メルボルン等の都市部は競争率が激しいけれど、私の住んでいるパース周辺は人口も少ないから比較的簡単に助成金がとれます」とのこと。

また、政策自体は目新しくはないと言いましたが、これはヨーロッパと比較した場合であって、日本とは全然違います。その大きな違いが、オーストラリアの文化政策はヨーロッパ諸国と同じく、文化を一つの生産活動であり、産業であると見なした上で作られていること。

ザラさんによると新しい国の政策は2010年から新しい議論が始まったものが、まだ公表されないので徐々に問題になってきているとのことでしたが、それでも具体的な目標金額ははじき出されています。

私は以前、オランダの文化政策※を斜め読みしたことがあるのですが、(※去年の政権交代以前の文化政策、オランダの文化政策は4年に1度出されます)約半数のページは、前回の文化政策のエヴァリュエーションにページが割かれており、その結果と社会が目指す方向を考慮に入れて次の4年間の文化政策が計画されていました。

日本の文化政策に欠けているのは、このエヴァリュエーションなのかもしれません。

ところで、レクチャーの後半には、来場者から非常に良い2つの指摘がされました。1つは、オーストラリア政府の文化政策では、オーストラリア人アーティストが海外で活動するためのサポートは手厚いが、海外のアーティストに伴うサポートが少ないこと。そしてもう一つは、今の政権では国、州、市からの手厚いサポートがあるが、政権交代で助成金がなくなってしまう状況もあり得る。そうなった時の手段をどう講じるのかという指摘でした。

1つ目の指摘に対して、ザラさんは、やはり産業だと捉えている以上、自国の文化を海外に売り込む方に力が入っているのは否めないとおっしゃっていました。

2つ目の指摘についてプルーさんは、「助成金に頼らずに活動していくことはとても大切だと思っていて、私はあまり制度を利用していません。基本的な収入を自分で得て、それで創作活動をする方が私にとっては楽しいからです」と仰っていました。

さて、こういう話を聞いていていつも感じるのは、欧州やオーストラリアの文化政策はオフェンシブで、日本の文化政策はディフェンシブということ。

もちろん日本は民間の文化振興や活動がとても活発なので、どちらがどうとも一概に言えませんが、もう少し戦略的に骨子を国がたててくれたなら、経済産業省がプッシュするアニメだけでなく、もっと面白い状況も生まれてくるのではないでしょうか。

オーストラリアの文化政策の示すゴール

 

 

Purue Cromeさんのホームページ

http://www.pruecrome.com

 

PIP&POPさんのホームページ

http://www.pipandpop.com.au

PIP&POPさんが手掛けた銀座エルメスのショーウインドウタイトルは、

If you find me in a dream。10月18日まで

PIP&POPさんの作品 at SPIRAL

 ところで、本当に偶然なのですが、会場には、TRUNKが春にお手伝いをしたキヤノンNEOREAL2012に参加していたアーティストの志村伸裕くんもいました。彼はPIP&POPさんのお友達だそうです。9月にはメルボルンで開催されるメディアアートのビエンナーレExperimentaに参加するそうで、レクチャーの最後に司会の方から参加の経緯と意気込みを聞かれていました。9月にメルボルンへ行かれる方は是非見に行ってくださいね!

 

志村君が参加するExperimenta

http://www.experimenta.org

 

 

 

文:西中川 京(プロジェクトコーディネーター/キュレーター)

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