2011.07.01 sunday morning @ ekwc グランドツアー

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施設の中心にある窯場には大型と中型の窯が並んでいます。

次の作品の窯入れを準備中。

4月末、オランダのスヘルトゲンボス(s'Hertogenbosch)にある、「sundaymorning @ ekwc」という不思議な名前の施設を訪ねました。ここは、TRUNKが10年程前にコーディネートした「Droog & Dutch Design展」(2000年/リビングデザインセンターOZONE)でお世話になったランティ・チャン(Ranti Tjan)氏がディレクターを務めている施設。普段は非公開ですが、特別にランティとスタッフのリディアに中をグランドツアーしてもらいました。

 

sundaymorning @ ekwcを一言でいうならば、公立の窯業技術支援センター。名称の一部であるekwcとはHet Europees Keramisch Werkcentrumの略称です。公立の窯業技術支援センターは、日本でも有田、益子など窯業の盛んな地域にありますが、この施設が他と大きく異なっている点は、アートやデザイン、建築の作品を造り出すための技術支援を行っていること。対象者も陶芸家ではなく、アーティストやデザイナーなど、普段窯芸を表現手段にしていない人たちです。ランティ曰く、「ヨーロッパ中で、いや多分世界で唯一無二の施設!」。確かにそうかもしれません。

sundaymorning @ ekwcの活動形態は、アーティストインレジデンス。3ヶ月間のタームで、年間約45名のアーティストを受け入れています。私が訪ねた時は8名のアーティストが滞在していました。彼らは、アトリエと居室を施設内に貰い、CAD、成型、釉薬、窯入れ、ウッドワークなど、各プロセスのスペシャリストからサポートを受けて活動。3ヶ月間の滞在の最後に『卒業作品』を発表し、sundaymorning @ ekwcへ提出することになっています。

「この施設は24時間稼動していて、アーティストはいつでも好きな時に制作ができる。こんな窯業技術センターは他にないだろう?」とランティ。「だからここに入るための競争率は高いし、私たちもアーティストを厳選している。最高の環境だけど、逆にいうと彼らは常に自分の表現と向き合っていなければいけない。それに食事は当番制で、全員で食卓を囲むから、常に他のアーティストから刺激を受ける。これは相当のプレッシャーだし、強烈な体験だと思うよ」とも。丁度、レジデンス中だったminale-maedaのクニコさんは、ここでの生活を「外界から遮断されているし、ちょっとしたJailみたい!」と評していました。

釉薬のテスト中。

クリエイターに釉薬スペシャリストが付き添って指導中です。

キッチンにおいてあった曜日ごとのステッカー。

残り物に貼るのでしょうか。切実です。

minale-maedaは、ロッテルダムで活躍するデザイナーユニット。グランドツアーの最後に、二人のアトリエにお邪魔した時、マリオさんもクニコさんも「卒業制作」の真っ最中でした。プロダクトを中心に活動し、Droog designからもデザインを発表している二人ですが、窯芸では最初から最後まで自分たちでプロダクションするのは初めての経験だそうです。

アトリエでクニコさんに作品のコンセプトや制作過程を、プロトタイプを見ながら説明してもらっていると、スタッフやスペシャリストがひっきりなしにアトリエに顔を出し、アドバイスやおしゃべりをしていきます。この細やかな気遣いやフレンドリーな雰囲気も、sundaymorning @ ekwcで多くの素晴らしい作品が生まれるのに一役買っているのかもしれません。ここで作られたminale-maedaのテーブルウェアが製品化されるのが今から楽しみです。

minale-maedaのクニコさん。

「デザイン画から型をおこすのがこんなに大変だったなんて・・・。」

ディレクターズルームに置かれたランティの本棚。

これまで手掛けた展覧会や関わったミュージアムの

図録が本の背の色ごとに整理されています。

別れ際に、「sundaymorning @ ekwcの“sundaymorning”って何?」とランティに質問したところ、「ヴェルヴェットアンダーグラウンドの曲のタイトルだよ。僕の好きな曲だから施設の名前にしたんだ」との返答。歌詞の中にあるit’s nothing at all(結局全ては無意味だ)の部分を念頭に置いたのかどうかは分かりませんが、すごいセンスです。実はランティはオランダミュージアム界では5本指に入る現代アートの仕掛人。2010年の1月に、館長を務めていたmuseum goudAからekwcへ移ってきました。考えてみれば、昔からとてもコンセプチュアルでいつも何か新しくて面白い仕掛けを考えつく人でした。

sundaymorning @ ekwcは、これまで蓄積した「卒業制作」作品を10月にもって韓国で展覧会を行う予定です。興味を持たれた方は是非どうぞ。

 

施設の様子や作品はこちらからどうぞ

http://sundaymorning.ekwc.nl/

 

 

 

西中川 京(プロジェクトコーディネーター/キュレーター)

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